柏~筑波サイクリングのエネルギー消費量、運動強度および機械的効率

 CCAスペシャルゲスト 形本静夫(順天堂大学名誉教授)

 

 昨年に引き続き今年も標記サイクリングに参加させてもらった。今回の参加の目的は参加者とともにライドを楽しむとともに、118㎞のサイクリングによってどれほどのエネルギーを消費するのかを測定し、健康づくりにおける意義を皆さんに伝えることにあった。

 サイクリングのような移動運動時のエネルギー消費量を直接測定することはかなりの困難性を伴うので、今回は自転車エルゴメータによる負荷運動で作成した心拍数-酸素摂取量(酸素消費量)関係を利用することにした。心拍数と酸素消費量の間には高い直線関係が存在するので、心拍数が分かればそのときの酸素消費量を容易に知ることができる。そして、1ιの酸素消費量は4.924kcalの発生熱量に相当するので、サイクリング時の心拍数から、エネルギー消費量(kcal)を推定できることができることになる。

 また、今回は市販のペダリングモニターを利用してパワーを測定し、サイクリングの機械的効率(消費されたエネルギー費となされた機械的仕事との割合)を合わせて調べてみることにした。

 被験者は私自身で、わずか1名によるデータでしかないが、皆さんのサイクリングライフの参考になれば幸いである。得られた結果は、つぎの通りであった。

 

1 エネルギー消費量および運動強度

 およそ118㎞にわたって行われたサイクリング時の平均速度は23.9 km/h、平均心拍数は99拍/分であった。この心拍数から推定された総エネルギー消費量は2573 kcalで、体重1 kgを1 kmの運ぶのに必要なエネルギー量=エネルギーコストは、およそ0.34 kcal・kg-1・km-1となった。

この値は、サイクリング愛好者がツーリングやエンデューロレースに参加したときのエネルギーコスト(0.36~0.38 kcal・kg-1・km-1)よりもやや低いものであった。これは、走行速度が24km/hと遅く、コースも平坦でほとんどすべてをドラフティングしながら走ったことによるのかもしれない。

 この値(0.34 kcal・kg-1・km-1)もとに、体重が45 kgから75 kgの人について予想される柏~筑波サイクリングのエネルギー消費量を求めてみると、表1のようになった。推定値ではあるが、参考になれば幸いである。

 

 

表1 柏~筑波サイクリングの体重別推定エネルギー消費量

 

体重 kg

推定エネルギー消費量 kcal

45

1805

50

2006

55

2207

60

2407

65

2608

70

2808

75

3009

 

ところで、サイクリングのような有酸素運動の強度は、運動時の酸素摂取水準を最大酸素摂取量で除することで、科学的に評価することができることが知られている。そこで、心拍数(99拍/分)から酸素摂取量を推定し、最大酸素摂取量に対する割合を求めてみると、51%となった。この運動強度水準は、これまでの研究成果によれば無酸素的作業域値(AT)以下に相当するので、今回のサイクリングは、私にとって間違いなく有酸素的なものであったことを示している。

ところで、運動時における脂質代謝は、運動の強度が低いほど、また時間が長くなればなるほど盛んになる。今回のサイクリングは強度が低く、かつライドが長時間に及んでいたことを考えると、脂肪の燃焼が活発に行われていたと考えてよいであろう。

 

2 機械的効率

 私達の運動は筋肉中にある化学的エネルギー物質(ATP:アデンノシン三リン酸)を分解したときに放出されるエネルギーを利用して行われる。放出されたエネルギーの一部が機械的エネルギーに変換されて手足の動きとなり、その他は熱エネギーとなって身体を温めることになる。このときに分解した化学的エネルギー量に対するなされた機械的仕事の割合を機械的効率と呼び、自転車では0.20前後の値をとることが知られている。

そこで、ペダリングモニターで得られたパワー値もとに、今回のサイクリングの総仕事量を算出して機械的効率を求めてみたところ、0.207となった。

したがって、使用されたエネルギー2573 kcalのうち、533 kcalが自転車推進のだめの機械的エネルギーに変換され、残りの2040 kcalの多くは熱となって身体を温められるのに使われたわけである。ライド中に汗をかいた人もいるかと思われるが、これは、放出されたエネルギーの大半が熱エネルギーに変換されたためである。

運動の強度やエネルギー消費量を測定し評価することは、運動プログラムを考える上で、とても大切なことである。今回の話題提供がそのときに役立てば幸いである。


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